すべての工程の協力が不可欠です。
TOCの研修でお話する時がありますが、在庫は時間という概念があります。
物理的な意味合いでいうと、在庫はモノであり、お金であると言えると思います。
これは製造業などはわかりやすいですよね。
作ったものを販売するので、お客様に届けるまでは自社の中に部品なり製品なりが転がっています。
時には山のように積みあがって、肌で在庫量を感じることがあるかもしれません。
反対に工務店やデザイン・設計事務所など、役務を請け負う業態には物理的な在庫はないと感じるかもしれません。
でも、お客様に納品するまでの受注は、表現の仕方は異なれど在庫と言えるでしょう。
まだ納品していない受注は、受注残や次繰りという表現をしている企業を見かけます。
この受注残が多いと何が起こるかというと、次の受注を受けづらくなります。
工務店なら大工さんが作業中なので、次の仕事をお願いできない。
建築屋さんなら現場監督が現場を離れられないので、次の現場を入れられない。
設計事務所なら今の設計に取り掛かっているので、次の打ち合わせができない。
自動車学校なら卒業していない受講生が多ければ、予約が殺到して教習ができない。
今の注文を納品しない限りは次の注文を取れない、取ったとしても取り掛かれない状況になってしまい、さらに納品が後ろにずれてしまう。
だから受注残という名の在庫は、時間そのものですよねってことです。
これは経営者なら感覚的にわかっていることが多いので、早く納品をすることに対しての工夫をされているところは多いです。
なのですが、現場に短納期の指示を出すと、多くの場合は自分の受け持つ仕事の納期を短縮することを考えます。
自分が早く仕事を終わらせれば、納期も早くなるだろう。
そう考えて、手を早く動かそうとするんです。
スキルアップや業務効率化で効果が出る可能性はありますが、全体から見たらさほどの影響を及ぼすほどの効果は出ないのが実情です。
さらに言ってしまうと、全く効果が出ない場合もあります。
自分は早く終わらせても他の担当者分が終わっていないとか、仕事を早く次に渡してもなかなか取り掛かってくれないとか。
そうすると、結局のところ納期は短縮されません。
TOCで言えば部分最適となってしまい、全体最適とはなっていないということですね。
スピードを早くするためには、実は多くの人の協力が必要になる。
方針の共有がとても大切なんです。