一部には良くても全体的には悪影響ということは起こり得る事象なので、誰彼に忖度することなく施策を実施できるのが全員経営です。
何年か前にふんわりアクセルで車を発進させるとエコな運転ができます、という発表がされていました。
車を発進させる際の加速をゆっくりにする、具体的には時速20kmになるまでの時間が5秒程度になるようにアクセルを踏むと燃費が12%改善しますという感じです。
今でも環境省から告知されているエコドライブ10のすすめに残っているみたいですね。
こういった施策を見るとモヤッと気になってしまう性なので、あれこれと検証したくなったりします。
とはいえ実際には大掛かりな検証になってしまうのでできませんが、世の中には同じことを考える人はいるもので、考察記事はあちらこちらで見かけます。
個人的には車社会の全体的な面で見ると、ふんわりアクセルはそれほど効果を発揮しないことが多いという意見が目立った印象でした。
何が違和感を感じるかというと、1台の車だけで検証を行ったのならば燃費はよくなるのは間違いないでしょう。
日本には8273万台以上の車が保有されていますから、その1台1台の燃費が良くなったらコストも下がりますし、Co2排出量も減れば環境にも優しい。
だたそうはならないのが部分最適の妙であり、全体最適を考えて施策を打たないとうまくいかない時があるということです。
どういうことかというと、例えば都会の交通量が多い地域で言えば先頭の車両が赤信号から青信号になった時、ふんわりアクセルで発信をすると後続の車も遅い加速になり、信号を通過できる車両数が大幅に減るからなんですよね。
もっと早い加速で発信していたならば30台通過できたとしたら、ひょっとしたら25台しか通過できないかもしれません。
地方の信号が少ない地域でも、交通の流れが悪くなり、総走行時間が延びてしまう結果になることは容易に想像ができます。
となると、車社会全体の燃費は良くはならずに悪化してしまう可能性が高いですし、多くのドライバーの時間を奪われることになってしまいます。
一部ではいい結果を生むと確信があったとしても、全体で見ると悪影響を及ぼすことがある。
こういうことは社会にも企業にも結構起こっていることであり、冷静に判断しないと意思決定を間違ってしまう要因にもなってしまうことなんです。
理論的にはふんわりスタートも間違いではないので、もし自分が正しい!と思い込んでしまった場合は信念を曲げずにやり続けてしまうこともあるでしょう。
たとえ周りが諫めたとしても、環境省が推奨していることだから!と頑なになることもあるかもしれません。
TOCでは全体最適を考えるツールですが、その考え方の1つにはこんな一節があります。
「どのように私を評価するか教えてくれれば、どのように私が行動するか教えてあげましょう。もし、理不尽な尺度で私を評価するなら、私が理不尽な行動をとったとしても文句を言わないでください」
組織をまとめる側が理不尽な評価尺度を設定したならば、そこに属する人たちは理不尽な行動を起こすということです。
もし部分最適で評価をしたならば。
もし全部原価で利益を評価したならば。
どんな行動を起こしたとしても、文句は言えないのです。
きっちりと全体最適を見据えて制度を作っていくことがとても大切です。
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